新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年から医療機関によるクラウドファンディングの取組みが急増しています。
しかし、多くの人にとってクラウドファンディングはまだまだ馴染みがない存在です。
「クラウドファンディングって最近よく聞くけれど、仕組みがよくわからない」「医療機関でも実施できるのだろうか」「実施するとして、どのようなテーマで行うのが良いのか」といった声が多く寄せられています。
そんな疑問に答えるために、医療分野にクラウドファンディングサービスを広めるべく当社と提携したREADYFOR株式会社の金久保智哉さんと、当社で『民間医局』クラウドファンディング事務局を運営する金井真澄さんに、クラウドファンディングの仕組みや、取り組む上でのポイント等を解説いただきます。
クラウドファンディングとは?医療業界における推移
金井
そもそも「クラウドファンディング」はどういう意味なのでしょうか?
金久保
クラウドファンディングとは、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」という言葉を組み合わせた造語です。
金井
なるほど。具体的にはどういった仕組みで資金調達をするのですか?
金久保
インターネットを通じ、プロジェクト実行者が自分のアイデアや活動内容を発信することで、その思いに共感した人や活動を応援したい人から資金を集める仕組みです。目標金額を達成したら、実行者は支援者に対してリターンを送付します。
近年、医療分野におけるクラウドファンディングが注目を集めており、READYFORではこれまで、同分野で累計約25億円もの資金調達をサポートしてまいりました。
金井
クラウドファンディングは返礼品が必須ですよね?医療機関の返礼品はあまり想像がつきませんが……。
金久保
クラウドファンディングという言葉尻をとると、「トートバッグ」や「マグカップ」など、「モノ」をリターンとして返礼するイメージが強いかもしれません。
しかし、医療機関によるプロジェクトでは「お礼状」や「ホームページにご支援者様のお名前をご掲載」など、「モノ」ではなくて「気持ち」をお返しする傾向が多いため、物やグッズによる返礼品がなくとも挑戦いただくことが可能です。
メディカル・プリンシプル社様と伴走させていただいたプロジェクトです。ぜひ、リターンの項目を覗いてみてください。
▶愛知県|地域で適切な医療を届けるため、変異株含めPCR検査の拡充へ
金井
なるほど、プロジェクトの成功にリターンの大小はあまり関係がないということですね。実際、プロジェクトの成功率はどのくらいなのでしょうか?
金久保
日本では2011年の東日本大震災を契機にクラウドファンディングが注目されるようになり、それから10年が経過しました。今やクラウドファンディングを営む事業者は150を超えると言われております。
中でもREADYFORの特徴は、「平均達成率の高さ」にあります。
通常、クラウドファンディング業界の平均達成率は30%程度と言われておりますが、READYFORでは平均75%の実値が出ており、とりわけ、医療チームが担当しているプロジェクトの達成率は80〜90%を推移しています。
業界平均達成率の低さからも分かるとおり、クラウドファンディングは決して簡単な手法ではありません。
しかしREADYFORでは、皆様の大切なご挑戦に「想いの乗ったお金を流す」ために、再現性の高い伴走をさせていただいております。
クラウドファンディングの魅力
金井
なぜREADYFORでクラウドファンディングを実施する医療機関が増えているのでしょう。
金久保
そのヒントは、「応援コメント」にあるのではないかと考えています。
READYFORのプロジェクトページでは、支援者から必ず応援のコメントをいただくように設計をしております。100名のご支援者様がいらっしゃれば100名分の、500名のご支援者様がいらっしゃれば500名分の応援コメントが、ページに溢れます。
〇〇先生に命を救ってもらったから、恩返しがしたくて支援をしました。
〇〇病院には、家族共々お世話になっています。地域になくてはならない病院です。応援させてください
〇〇病院とは直接関わりがありませんが、同じ子供をもつ親として、このような取り組みが少しでも増えてくれることを願います。頑張ってください。
金久保
このように、多くの方からの応援のコメントが、ウェブ上に掲載されていきます。
金久保
クラウドファンディングをご実施いただいた医療機関の中には、「応援コメントをいただいて、涙が出るほど嬉しかった」「応援のコメントを拝見し、改めて自分たちが地域に果たさなければならない使命を認識した」「従業員のモチベーションが上がった」とご感想をいただくこともしばしば。
金井
「医療機関」だけではなく、「患者さん」や「地域の方々」など支援者の皆様と一緒に一つのプロジェクトを作り上げていく。そして無機質なお金の流れではなく、「想いがこもったお金」の流れが、クラウドファンディングの大きな魅力ということですね。
なぜクラウドファンディングに挑戦するのか
金井
クラウドファンディングにご興味をお持ちでも、「自分たちの病院では何をテーマに実施しよう?」などの不安から、なかなか手を出せない医療機関様が多くいらっしゃいます。
クラウドファンディングを決断するきっかけは、どういったものが多いのでしょうか?
金久保
これまで多くの医療機関様の、クラウドファンディング実施のご決断を拝見してきましたが、近年、ご決断の背景として「予算の優先順位は低いけれど、医療機関として大切にしたい事業の費用を、クラウドファンディングで集める」という事例が多いと感じています。
多くの医療機関では毎年、次年度の予算編成をされる際に、次年度は「〇〇」に病院の予算を投資しよう、「〇〇」な設備投資を行いたいから金融機関へ融資の相談をしようなど、ご検討されるかと思います。
予算編成の優先順位を決める作業が、決算月の少し前に行われることが多く、往々にして、「病院の売上」に直結、あるいは「診療や命」に直結する事項に優先して予算が充当されると伺うことが多々あります。
予算の優先順位が低いものは、購入ができなかったり、事業が実施できなかったりするわけですが、予算の優先順位が低いからと言って「医療機関にとって大切ではない事業」というわけではないでしょう。
予算の優先順位が低くても、患者さんやそのご家族のQOL向上につながる取り組みや、地域の方々に喜んでいただける事業を、医療機関では考えていらっしゃるのではないでしょうか。
金井
なるほど、医療に携わる方々が「大切だと思うこと」を、諦めなくてよいのだ!というメッセージは、広く響く気がします。
では最後に、どういったテーマのプロジェクトがあるのか、ご紹介いただけますでしょうか?
金久保
近年、READYFORでよくお手伝いさせていただくのが、「ホスピタルアート」や「病棟の改修」といったプロジェクトです。具体的には「小児病棟の壁紙を、子供たちが大好きな可愛い動物たちが描かれたものに変更する」や「緩和ケア病棟の空間を、居心地の良いソファーに変更する」といった内容です。
確かに、これらの取り組みをしたからといって、すぐに売上に直結するかはわかりませんし、すぐに治療が成功に結びつくこともないかもしれません。しかし、病棟の壁紙が明るく綺麗になる、素敵な空間を作ることができれば、患者さんやご家族に喜んで頂けます。患者さんたちに「病気と戦う」勇気を養って頂ける、地域の方々の憩いの場を作ることもできます。
患者さんや地域の皆様と繋がりながら、自院の未来を作っていきたい。」そんな想いを持って、クラウドファンディングを通じた支援を募る医療機関が多いのではないでしょうか。
金井
地域との共存共生が「クラウドファンディング」をきっかけに加速する…ということですね。もちろん他にも様々な事例があって、ここではすべては語り尽くせないので、以上で少しでもご興味を持って頂けた方は、どうか遠慮なく、何なりと我々にご相談くださいませ。
クラウドファンディングについての情報は以下のWebページをぜひご覧ください。
▶あなたのクラウドファンディング挑戦をREADYFOR認定パートナーがサポートします
Profile
-
- 金久保 智哉
- READYFOR株式会社
キュレーター事業部医療チーム
リードキュレーター
- 国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を運営するREADYFOR株式会社で、医療分野に特化したキュレーターとして活躍。
-
- 金井 真澄
- 株式会社メディカル・プリンシプル社
保険サービスDiv.
ディビジョンマネージャー兼
事業開発Div.
シニア・ディレクター
- 医療業界でクラウドファンディングを活性化させるため、READYFOR株式会社との提携を主導。『民間医局』クラウドファンディング事務局を務める。